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STREET 3.0「道を外した書」トークプログラム「南條史生と語る井上有一と書」レポート



STREET 3.0「道を外した書」の展示会場ICHION CONTEMPORARYで12月24日(日)に開催されたトークプログラム「南條史生と語る井上有一と書」。本芸術祭のキュレーターの沓名美和氏が美術評論家の南條史生氏をゲストに迎え、出展アーティストである山本尚志氏、ハシグチリンタロウ氏、グウナカヤマ氏、日野公彦氏とともに日本の前衛書の礎を築いた書家・井上有一(1916〜1985)や、日本の書の未来について語りました。ここではその一部をレポートします。




井上有一から生まれた書のコミュニティ

井上有一は日本を代表する書家。比田井南谷や森田子龍など、同時代の書家と共に書の新しい表現を見出そうとしました。大学で書道を専攻していた山本氏が井上有一と出会うのは1988年頃、アートギャラリー「ウナック トウキョウ」による井上有一展がきっかけでした。山本氏は《夢》という作品に対峙し、「自分の未来を左右する」と確信して購入に至ります。その後、ウナック トウキョウの海上雅臣氏からアルバイトに誘われ、本格的に書の道へ進むことになります。作品の修復や、約3,300点に及ぶ井上有一のカタログ・レゾネ(作品集)の編集にも携わっていきます。

数年後、同じ職場で日野公彦氏がアルバイトを始め、井上有一が生前構想していたオールジャンルの展覧会「天作会」を立ち上げることに。趣旨に共感したハシグチリンタロウ氏が参加し、翌年にはカタログを見たグウナカヤマ氏が「僕も参加したいです」と山本氏の自宅へ電話をかけ加入。こうして4人のアーティストが集まりました。



STREET 3.0「道を外した書」展示風景より


井上有一が海外に与えた影響

美術史における日本の書の位置付けは、現在も研究の余地があるテーマです。前衛書家たちが海外に与えた影響について南條氏は、「井上有一は1957年にサンパウロ・ビエンナーレに出展している。1959年には比田井南谷や森田子龍も。フランツ・クラインなど1950年代のアメリカのアーティストは日本を見ていた形跡がある」と指摘。

「井上有一がアメリカへ影響を与えていたのは確かです」と山本氏。

「アートコレクターで作家の宮津大輔さんは著作※で、批評家のクレメント・グリーンバーグ氏がジャクソン・ポロックから日本の書に影響を受けていることを口止めされていたと明かしています。また、井上有一が1956年に制作した《愚徹》という作品がありますが、1957年にフランツ・クラインが非常によく似た作品を描いています。ただ、フランツ・クラインは余白に色を塗っている」

※『現代美術史における前衛書のリポジショニング―墨人会とその同時代表現をめぐって』思文閣出版(2022 )


中国に約10年滞在していた沓名氏は「西洋において余白はネガティブスペース。だから、西洋では余白を塗りつぶしてしまう。日本では全く違ってポジティブに捉えられています」と指摘。

山本氏は「井上有一が作品を売りに向かった先で『これはDrawingだ。Paintingでないから安すぎて売れない』と言われたことがあるそうです。井上有一の作品が売れたのは、ドイツと中国。海上さんは歓待され、杭州、天津など各地で展覧会をしました」

「中国では先生の権力が非常に強いんです。書の道を逸脱すると破門になってしまう。破門になった人たちの多くは現代美術に向かったようです」と沓名氏。




日本の書の未来

会場外観

今後、日本の書はどこへ向かっていくのか。南條氏から未来について問われると、アーティストたちは次のようにコメントしました。


「文字を書かなくなった時代に、例えば1000年後の人がゴミみたいな中から出てきた僕たちの作品を見て、『何やこれは』と驚いてもらえるようなものを創りたい」

(ハシグチリンタロウ氏)


「書くことはどこから始まったのか、と考えています。思うこと、感じることがパッと浮かぶのは、外から言葉を受容した時、言葉が発生するのではないかと思う。それが今の制作のテーマ。今後の未来もそんな姿勢で取り組んでいきたい」

(日野公彦氏)


「自分の文字『グウ文字』を増やしていきたい。100枚以上書けば自分のものになると感じています。言葉を増やして、自分の文字だけで文章を作りたい」

(グウナカヤマ氏)


「若手の書家向けに『ART SHODO』を組織しています。『今から書道をやりたい』と志を持つ人が、100人規模と大勢いる。コンペや若手育成のサポートをしながら、今後は彼らの時代を創っていきたい」(山本尚志氏)


「書から現代美術に進むアーティストの中で、一つ問題点があると感じるのは書を捨てていること。今回出展いただいたアーティストの皆さんは、書を背負っている。日本では書のマーケットは小さいけれど、私たちのようなオーガナイズする人間が必ず皆さんを見つけるので、そこにい続けてほしい。書を背負う人たちが描いている作品の力は強い」と、沓名氏は期待を寄せました。


最後に、会場のオーナーで中国の書画や骨董を幅広く取り扱っているオークション「Jo’s

Auction」を運営する上明氏は「中国で井上有一はとても人気です。今後文化・芸術面で日中の交流をより深めながら、若い世代に開かれたギャラリーを創っていきますので今後もお待ちしています」と語りました。


アーティストそれぞれのスタイルで熱気を見せる日本の書。表現の場を探す若手作家の受け皿として拡張し、新たなムーブメントを起こしていきそうな予感を感じさせる時間でした。今回出展した4名の活躍はもちろん、日本の書の未来に期待が高まります。




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